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地名の一致は阿波忌部進出の痕跡か? ② 徳島~和歌山~千葉~茨城

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 天富命安房国に御渡航の図(安房神社


今回は、動画に出ていた「勝浦」のほか、個人的に気になっていた「白浜」と「牟婁」、「那賀」「那珂」についてだけ書きます。

 

これらも簡単に調べた範囲の情報なので、徹底的に調査すれば、もっといろいろなことが分かるのではないかと思います。他の地方にも、似た地名は若干ありますが、忌部の進出地と地名の類似の重なりが特に目立ちます。

 

そこで、これらの地名の一致または似通った場所に、忌部系の神社がないか調べました。わかったものは書いておきます。実際にはもっとあると思います。
有名な神社があったところは、それ以上調べていませんし、ネットでは神社の名前しかわからず、御祭神の確認ができないので、あきらめたパターンが多いです。
また、前回書いたように、どう見ても、御祭神が後年合祀されたっぽい神社が、とても多いです。

 

もう一点、書いておかなければなりませんが、関東には「事代主命」を御祭神にしている神社が多いです。どちらも、関東を開拓された出雲系の神様、という認識です。当然ですが。

 

しかし、古事記の舞台が阿波であったとする研究者の方々は、「古事記の出雲」が現在の島根の出雲ではなく「徳島」だったとしているので、そこまで求める痕跡の範囲を広めるのはやめました。きりがないからです。

 

伊豆諸島の式内社数社は、事代主命の妻や子が御祭神になっています。
事代主命の妻に阿波忌部族の女性がいるのですが、関東の神社の由緒を見ていると、事代主命には何十人もの妻がいるのだそうです。事代主命の勉強だけで、相当な時間が必要になりそうなので、これからの課題にします。

 

とりあえず、一例だけ書いておきましょう。
延喜式内社・名神大伊豆国賀茂郡 阿波神社の比定社である神津島阿波命神社の御祭神は事代主命正后である阿波命です。



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阿波命の「阿波」はどう考えても「阿波国」の阿波でしょう。
阿波国の女性が事代主命の正妃であって、伊豆諸島の式内社に祀られているわけです。
御子の物忌奈命が故郷の母を偲んで建立したのかもしれません。

 

この神ついて、今後の記事でもう少し詳しく説明します。
 

 

また、旧地名が「伊豆国賀茂郡」というのも大変興味深いです。
「かも」についてもまた別の機会に書きます。
 
そしてその「勝浦」の地名ですが、徳島の勝浦郡勝浦町に、(またも)日本で唯一、「事代主命」の名を冠した延喜式式内社事代主神社」があるのです。
さらに、徳島市勝占(かつら)町の式内社「勝占神社」にも、「事代主命」が祀られているのです。

 

一般的には、「出雲」は島根ですので、古代阿波の地に出雲族が進出してきた名残と思われるかもしれません。本当にそうでしょうか?
逆に、阿波から古代の島根県に、忌部族が進出した痕跡ならあります。
阿波の神社や忌部の歴史を知ると、古事記の「出雲」は阿波であった可能性の方が高くなってくるのです。古くから、徳島と島根に交流があったことは、考古学的にも確認されています。これも海人が関係しているのです。
そして、あきらかに阿波忌部は海人族の一面があるのです。
 
《勝浦》 『和名抄』阿波国勝浦(かつら)郡

 

① 徳島県 勝浦郡勝浦町 

 

☆ 式内社 阿波國勝浦郡 事代主神社 御祭神 事代主命
 
② 徳島県 徳島市勝占

 

☆ 式内社 阿波國勝浦郡 勝占神社 御祭神 大己貴命 配祀 事代主命  須勢理姫命 少名彦命 玉櫛姫命 大山祇命

 

③ 和歌山県 東牟婁郡 那智勝浦町 

 

④ 三重県 北牟婁紀北町海山区島勝浦  

 

⑤ 千葉県 勝浦市  

 

遠見岬神社 勝浦市浜勝浦
 江戸時代までは「富大明神」と称し、御祭神は「天富命(忌部族)」

 

☆『姓氏家系大辞典』(千葉県勝浦市)には、「勝占忌部の所、阿波勝浦より渡りたる忌部なり」との記述あり
 
  
※ 上記の「牟婁」にも注目してください。 ※

 

紀淡海峡交流研究会」のHPにこうあります。

 

徳島の海南・那賀・明神・上板・六郎・弁天・三ツ石・千畳敷・佐野・勝浦・椿は、和歌山側にも同地名が在り、徳島・淡路・和歌山の間では佐野・明神・吉野が共通である。

 

 また徳島の牟岐(むぎ)、淡路の室津、和歌山の牟婁(むろ)なども類似する。

 

淡路の阿万に和歌山の海部、徳島の由岐、淡路、和歌山の由良、徳島の日ノ峰、和歌山の日ノ御崎など、他にも類似した地名は多い。
以上は、類似する読みを基本にあげてみたが、このような地名の共通性を論じるには、さらなる論考が必要である。



三重県にも「牟婁」と「勝浦」があることは注目に値します。
それでは、《牟岐》《牟婁》と《白浜》を見てみましょう。
 
① 徳島県海部郡に牟岐町があり、そのすぐ隣の「美波町」に白浜があります。
  海部郡は高知との県境にあり、その県境を越えてすぐの東洋町にも白浜があります。 

 

※『大日本地名辞書』によれば、『和名抄』阿波国海部郷は、現在の県境よりも高知側まで広がっていました。
 

 

② 和歌山県 西牟婁白浜町               
      
③ 静岡県 下田市白浜
     
④ 千葉県 南房総市白浜町 

 

☆ 下立松原神社 御祭神 天日鷲命(阿波忌部の祖)

 

⑤ 茨城県 行方市白浜

 

☆ 大麻神社  御祭神を 武甕槌命経津主命、大宮姫命、手力男命、市杵島姫命倉稲魂命水速女命としながらも、創立は不明であるとし、『常陸風土記』に「麻生の里、古昔、麻、渚沐の涯に生ひき。囲み、大きなる竹の如く、長さ一丈に余れり」とあることを麻生の地名のいわれであり「本社社名の由来」と伝えられてる、との解説があります。

 

これも御祭神をあとから合祀した可能性が強いです。「大麻」の名がつく神社は基本的に阿波忌部族の神社と考えて間違いありません。長くなるので、これも別の機会に書きます。



《那賀》《那珂》

 

① 徳島県 那賀川(河川名) 那賀郡  阿南市 那賀川

 

② 和歌山県  那賀郡(現紀の川市

 

☆ 三船神社  御祭神 木霊屋船神 太玉命(忌部の祖) 彦狭知命紀伊忌部氏の祖)

 

 

④ 茨城県  常陸大宮市那賀

 

⑤ 茨城県  那珂

 

⑥ 茨城県  東茨城郡城里町 那珂西  

 

☆ 延喜式内社 常陸那賀郡 石船神社  御祭神 鳥石楠船命 別名 天鳥船命(忌部系)

 

⑦ 茨城県  那珂郡     

 

☆ 豊受皇大神宮  御祭神  豊受大神 (阿波の神)

 

⑧ 栃木県  那須郡那珂川町 

 

☆ 鷲子山上神社  御祭神 天日鷲命(阿波忌部の祖)



これを見ただけでは、偶然だと思う方もいるかもしれません。
阿波忌部の関東進出の他の根拠と重なると、地名・神社名を見ただけでピンと来るようになります。少しずつしか書けませんのでご理解ください。

 

間違い、勘違い、市町村合併等での地名変更などがあるかもしれません。
また、他の地名や神社等の新しい情報があれば、追加・訂正していきます。



※ 和歌山県 「三船神社」を追加しました。
※ 延喜式内社 名神大 伊豆国賀茂郡阿波神社」を追加しました。
※ 『姓氏家系大辞典』(千葉県勝浦市)を追加しました。