空と風

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天日鷲命とその系譜


このブログでは、古代阿波国が日本建国にかかわる旧国中の旧国であることを私自身勉強しながら紹介していますが、その根拠の一つが忌部氏の存在です。

その中でも登場する機会の多い「天日鷲命」について、これまでは「阿波忌部氏の祖」としか紹介していないので、どのような神なのかをまとめてみることにしました。
今後も何かにつけ目にする御神名になると思われるからです。

しかし始めてみると、これがなかなか大変です。
一回にまとめてアップしようと思いましたが、それでは調べるのに時間がかかって、いつになるのか見当もつかないので数回に分けることにします。



天日鷲命」(あめのひわしのみこと)

 別名は 「天日鷲翔矢命」(あめのひわしかけるやのみこと)『姓氏録』

     「天加奈止美命」(あめのかなとびのみこと) 『大日本神名辞書』

        「麻植神」(おえのかみ)              『延喜式神名帳

       「天日別命」(あめのひわけのみこと)      『伊勢国風土記逸文



系譜は文献によって若干食い違いがありますが、拾い集め、または繋ぎ合わせると、次のようになります。

つながりのある神々は、それぞれが大物の神で、個別に解説していたら本が書けそうなくらいの文章量になりますので、関係のみ記します。



① 「天御中主神」 (あめのみなかぬしのかみ)

   の12世孫 『伊勢国風土記』  14世孫 『姓氏録』 『度会氏系図

② 「神魂神・神皇産霊神」 (かみむすびのかみ)

   の 5世孫 又は、7世孫 (神魂命五世孫天日和志命、神魂命七世孫天日鷲命) 『姓氏録』

③ 「高皇産霊尊」 (たかみむすひのみこと)

   の孫 『大日本神名辞書』『姓氏録』 または、子 『安房斎部系図

④ 「天牟久怒命」=「天村雲命」 (あめのむらくものみこと)

   の孫 『先代旧事本紀・国造本紀』

⑤ 「天手力男命」 (あめのたじからおのみこと)

   の子 『大日本神名辞書』『古史伝』

⑥ 「天背男命」 (あめのせおのみこと)

   の子 『安房斎部系図

⑦ 「八倉比売命」 (やくらひめのみこと)

   の子 『安房斎部系図
                                      
⑧ 「思兼神」 (おもいかねのかみ)

   の子 『ほつまつたゑ』 または 孫  

⑨ 「天太玉命」 (あめのふとだまのみこと)

   の子 または、兄弟 『安房斎部系図

⑩ 「天比理刀咩命」 (あめのひりとめのみこと)

   の兄弟 『安房斎部系図

⑪ 「櫛明玉命」 (くしあかるたまのみこと)

   の兄弟 『安房斎部系図

⑫ 「天津羽々命」 (あまつははのみこと)

   の兄弟 『安房斎部系図

⑬ 「足浜目門比売神」 (あわまとひめ)

   の夫 『安房斎部系図

⑭ 「彌豆佐々良姫命」 (みづささらひめのみこと)

   の夫 『伊勢国風土記逸文

※ 「言筥女命」(いいらめのみこと)

   の夫 『忌部神社

⑮ 「大麻比古神」 (おおあさひこのかみ)

   の父 『安房斎部系図

⑯ 「長白羽命」(ながしらはのみこと) 別称「天白羽命」 (あめのしらはのみこと)

   の父 『安房斎部系図
    
⑰ 「天羽雷雄命」 (あめのはづちおのみこと) 別称「武羽槌神」 (たけはづちのかみ)

   の父 『安房斎部系図

⑱ 「彦国見賀岐建輿束命」 (ひこくにみがきたけよつかのみこと)

   の父 『度會國御神社』系譜

⑲ 「津咋見命」 (つくいみのみこと)

   の父

⑳ 「天富命」 (あめのとみのみこと)

   の祖父 『後藤田家家系』

  
他にも系譜をたどれるようですが、重要なものが見つかったら追加します。


※ 後裔 ※

系図等では、安房忌部、神麻績連、倭文連、長幡部、神宮部造など。

『姓氏録』では、弓削宿祢、天語連、多米連・宿祢、田辺宿祢、犬養宿祢 など。

『斎部宿祢本系帳』では、天日鷲翔矢命の子の天羽雷雄命の子孫として委文宿祢・美努宿祢・大椋置始連・鳥取部連など。

『古代氏族系譜集成』では、長幡部の祖。



~解説~

①②③ この神々は、古事記上巻の冒頭、天地初發之時、高天原に現れた「造化三神」。
 現れた順番は、

1. 天之御中主神 (あめのみなかぬしのかみ)
2. 高御産巣日神 (たかみむすひのかみ)
3. 神産巣日神   (かみむすひのかみ)

ですが、上記の系譜を見ると、神産巣日神よりも高御産巣日神のほうが新しい時代の神のようです。
古事記では、高御産巣日神天照大神と同じ時代の神で、また『延喜式神名帳』によれば「神祇官御巫坐祭神八座」(宮中八神)として祀られており一説には本来の皇祖神といわれます。


④ 『神宮雑例集』では「天牟羅雲命、国常立尊12世孫」となっています。
 
伊勢神宮神道五部書の『御鎮座本記』によれば、「天村雲命は神皇産霊神6世の孫也」とあり、
天村雲命の孫とされる天日鷲命は、神皇産霊神8世の孫ということになり、②と若干の違いが出ます。
天御中主神12世孫」という説もあります。
天村雲命は非常に重要な神で、また時間をかけて紹介します。


⑤⑥ 以前、本を読んでいてずっと疑問点だったのが、この二神でした。

天日鷲命の父として、それぞれ名が挙がっていたからです。
調べたところ、二神は別名同神であるとわかりました。



⑦ 八倉比売命は、上記、天背男命(天手刀雄神)の后神です。

これがまた大変なのです。くわしくは別に書きます。
八倉比売命を祀る式内社阿波国のみの神社ですが、比定社が三社あります。

「天石門別八倉比売神社」 (徳島市国府町)の御祭神は「大靈女命」(おおひるめのむち)
上一宮大粟神社」     (名西郡神山町)の御祭神は「大宜都比売命」(おおげつひめ)
「一宮神社」          (徳島市一宮町)の御祭神は「大宜都比売命

つまり、伊勢神宮皇大神宮(内宮)と豊受大神宮(外宮)で祀られているどちらかの神が、天日鷲命の母ということになります。


⑧ 思兼神は、高皇産霊尊③の子といわれます。

天手力男命⑤は、思兼神の子、または天太玉命 ⑨ の子、といわれますが、上記系譜を眺める限り、天太玉命の子という説には無理を感じます。
高皇産霊尊 → 思兼神 → 天手力男命 → 天日鷲命 であれば、天日鷲命高皇産霊尊の3世孫になります。


⑨⑩ 天比理刀咩命は、天日鷲命の兄弟で、天太玉命の后です。

したがって、天太玉命忌部氏の祖)と天日鷲命(阿波忌部氏の祖)は、義理の兄弟です。

天太玉命は、高皇産霊尊の直系(子)。
天日鷲命は、国常立尊神皇産霊尊の直系で、天比理刀咩命を介して親族になったと見ていましたが、上記⑧が正しければ、天日鷲命にも高皇産霊尊の血が流れていることになります。
ただしそれでは、高皇産霊尊から見て、息子(天太玉命)と曾孫(天日鷲命)の姉または妹が結婚したことになり、世代にずれが生じます。


⑫ 天津羽々命は、“あの”事代主命の后神です。

伊豆国式内社に「阿波神」として祀られています。


古事記の「出雲神」が、現島根の神ではなく阿波の神であることが調べるほどに分かってきます。


⑬ 足浜目門比売神は、天日鷲命の后神です。

式内社 秘羽目神足浜目門比売神社(ひわめあわまどひめじんじゃ)で、日本唯一、阿波で祀られています。


⑰ 天羽雷雄命は、天日鷲命の子、大麻比古神⑮の兄弟で、倭文氏の祖神です。



⑲ 津咋見命は、大麻比古神 ⑮ のこと、という一説があります。


⑳ 天富命は、上記のように『後藤田家家系』では、天日鷲命の孫となっています。

一般的には、天太玉命 ⑨ の孫といわれます。
阿波国風土記逸文によれば、天太玉命の孫であると同時に、十代崇神天皇第二王子となっています。

房総開拓の祖神で、旧安房郡の房総の海は「富浦」、山にも「富山」の名が残ります。

式内大社 安房安房郡 后神天比理乃咩命神社(洲崎神社)は、天富命が祖母 天比理乃咩命 ⑩ を祀った社です。
つまり、祖母の兄(または弟)が、天日鷲命となります。

安房白浜町式内社「下立松原神社」は、天日鷲命の孫 由布津主命 が、天富命とともに房総開拓の後、祖神の天日鷲命を祀った社です。

由布津主命と、天富命の娘「飯長姫」の子が、「訶多々主命」で、安房(千葉)忌部の祖、となります。



今回解説できない神々も含め、今後の関連記事の中で随時紹介していきます。
今回はこれくらいにし、次は天日鷲命がどのような神かを書いてみます。


(▼0▼)/~~see you again!