空と風

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天日鷲命と各地の神社 2

 
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鷲子山上神社 (HPより)
 
※ 『和紙の里』より
 
天日鷲命、あまのひわしのみことこの神は、開運・開拓・殖産の神として崇められている。

神話で知られているのは天照大神が天之岩戸に入られたとき岩戸の前で神々の踊りがはじまり、この神が弦楽器を奏でると弦のさきに鷲が止まった。
多くの神々が、これは世の中を明るくする吉祥をあらわす鳥といってよろこばれ、この神の名として鷲の字を加えて、天日鷲命とされた。
 
この命は、忌部氏の祖として、阿波の開発・殖産に功のあった神で、今日、徳島県麻植郡山川町に残る伝承に、紙の祖神として山川町高越山に高越神社としてまつられている。

この神は、東日本にあってはいまも紙の祖神となっている。茨城・栃木面県境にある鷲子山上神社として鎮座しているのが有名である。
 
これは忌部氏が関東開発の命をうけて、四国阿波の国から関東に上陸し、その拠点としてここに天日鷲命をおまつりしたという由緒をもっている。

この信仰は茨城・栃木県下はもちろん、東北地方にもおよび、白石市の遠藤忠雄氏の作業場にもまつられているのをみた。
 
さらに、この天日鷲命は東京の下町に鷲おおとり神社としてまつられている。すなわち、台東区千束三丁目に鎮座する鷲神社である。

江戸時代、江戸では浅草紙という庶民のためのちり紙などが大量に消費された。このため隅田川流域を中心に多くの紙すき業が大発展した。
その業者たちが紙業の発展を祈って、この神社を自分たちの守護神としていた。
明治に入り東京の紙業は近代工業の成立発展とともにほとんど消失したが、その後も開運・開拓・商売繁目の神としてまつられ、江戸時代より酉の祭りとして知られている商業の神として、混雑する市衝地に鎮座している。
以上のほか、全国有地の紙すきの里に天目鷲命がまつられている。
 
 
鷲子山上神社  栃木県那須郡那珂川町矢又 
        茨城県常陸大宮市鷲子
鷲神社     土浦市東崎町
鷲神社        田村町
鷲神社        大畑
鷲神社      那珂郡那珂町鴻巣
大鷲神社     北相馬郡利根町押戸
鷲宮神社     稲敷郡河内町古河林
脇鷹神社     桜川村飯出
鷲神社      稲敷市鳩崎
鷲神社      結城郡八千代町沼森
鷲神社      取手市寺田
日枝神社     龍ヶ崎市馴馬
佐志能神社    石岡市染谷
日鷲神社                水戸市金谷町
鷲神社         古河市沼森
 
 
※ 【古樹紀之房間】 ~天鳥船神の実体(一部引用) 全文はこちら
 
この石船神社は那珂川の支流・岩船川沿いに鎮座し、兜石と呼ばれる巨岩が神体とされるが、近隣に粟・阿波山という地名が見える。
 
河内の岩船神社の祭神、饒速日命は天鳥船に乗って現在の大阪市に天下ったとされる神話伝承もあり、全国各地の多くの石船(磐船、岩船)神社が物部一族により奉斎されたことに留意される。
 
かつ、天鳥船神を祀る神社が全国で少ないうえ、利根川下流域から常陸国那珂郡にかけての地域に集まる事情にある。
 
那珂郡には阿波郷の地名も見えるが、このあたりには、少彦名神・天日鷲翔矢命の後裔安房忌部の同族たる衣服氏族の倭文連・長幡部一族が繁衍し、静大社や鷲子山上神社などを奉斎した。
 
倭文連・長幡部一族はその近隣の久慈郡にも拡がったが、久慈郡を領域としたのが物部氏族の久自国造であり、その祖も景行巡狩に関与した(後述)。
 
(中略)
 
安房忌部の関係か、信太郡では浮島の南西方近隣には阿波崎・阿波津・阿波(いずれもに現稲敷市域。前二者は旧東村、阿波は旧桜川村)という地名も見える。
 
阿波にある大杉神社は、関東・東北地方に分布する大杉神社の総本社であり、祭神は倭大物主神で水上交通の神とされるが、祭神のほうはおそらく訛伝であろう。
 
この神社名に通じる杉山神社が、式内社をはじめとして武蔵の南西部に多く分布し、杉などの木種をわが国に伝えた五十猛神天孫族の始祖)を主祭神として安房忌部の支族が奉斎した事情があるからである。
 
水上交通の神とは舵取りすなわち香取に通じ、鳥船神に通じる点に留意される。大杉の神の信仰は、「あんば信仰」ともいわれるが、悪魔ばらえの神として、常総から陸奥の太平洋沿岸方面に拡がりを見せるから、この点でも香取神を想起させるものがある。
経津主神らが悪神の天津甕星(別名天香香背男)を制圧した神とされる(『書紀』の一書)、からである。
 
 
※ この、茨城県稲敷市の阿波は(あば)と読み、(あんば)とは、この阿波のことです。
「杉」の名に関わる神社が、関東で多数、阿波忌部・安房忌部の関連で建立されていることは、阿波(徳島)の杉尾大明神(天石門別八倉比賣神社)をはじめ徳島県内に20数社ある杉尾神社との関連性を想像させます。
 
 
利根川下流域の両総・安房あたりから武蔵・下野にかけての地域には、フサ(総)、麻生(常陸国行方郡)、結城(木綿キで、木綿を作るカヂの生える地)等々の麻・衣服関係の地名が多く見える。
 
麻生は、『常陸風土記』行方郡条に見える古い地名(現行方市)であり、大麻神社が鎮座する。
 
現在の祭神は天太玉命とも、武甕槌神経津主神などともするが、おそらく安房忌部の祖・大麻比古命(天日鷲命の子)が本来の祭神ではなかろうか。
 
麻・衣服関係の地名と共に、麻植神たる天日鷲翔矢命を祭神とする神社が上記地域には多く分布する。
 
安房の下立松原神社 (白浜町)、下総国葛飾郡下野国都賀郡の鷲宮神社や多くの鷲神社・大鳥神社大鷲神社がそうした神社としてあげられる現在、「大鳥・大鷲」を名乗る神社の祭神が日本武尊とされるものがあるが、これは後世の訛伝)。
 
鷲神社でいえば、酉の市で知られる台東区浅草や、千葉県市原市今津朝山、香取市(旧佐倉市)先崎、稲敷市鳩崎などあるが、今津朝山は麻穀の播殖で良質の麻の産地だったと伝える。
 
 
※ 上にあるように、関東にはここには記さないワシ・トリ系神社が多数ありますが、祭神が不明だったり、多くがヤマトタケル命となっているものの、一連の同名神社の祭神やこれらの歴史、鎮座地名、古来の産業などから、本来の祭神は天日鷲命と考えられます。
 
 
下立松原神社  千葉県安房白浜町滝口
下立松原神社                  千倉町牧田
鷲神社           白井市
鷲神社           市原市今津朝山字宮前
鷲神社         佐倉市先崎
鷲神社        千葉市中央区登戸
                生実町
鷲神社        我孫子市久寺家 
神明社        市川大門町    
上岩橋大鷲神社    印旛郡酒々井町
酒々井大鷲神社       酒々井町
大鷲神社                  栄町安食
安房神社       館山市大神宮
滝口神社       鴨川市花房
 
鷲宮神社     埼玉県北葛飾郡鷲宮町
鷲神社       さいたま市南部領辻
 
 
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杉山神社 (神奈川県神社庁
 
 
~由緒~
天武天皇白鳳3年に安房神社神主の忌部勝麿呂が御神託によって、武蔵国の杉山の岡に高御座巣日太命(高御産日命)・天日和志命(天日鷲命)・由布津主命(阿八別彦命・天日鷲命の孫・忌部氏の祖)の三柱を祀った「杉山神社」としたことにはじまる。
 
大鷲神社       横須賀市若松町
 
白紙社     山梨県市川大門町
 
栗矢八幡社      長野県下伊那郡阿智村栗矢
 
伊賀八幡宮      愛知県岡崎市伊賀町郷中
和志取神社      安城市柿崎町和志取
鷲取神社       豊田市御立町
鷲田神明宮      額田郡幸田町
 
 
多奈閇神社     三重県いなべ市北勢町田辺
多奈閇神社      員弁郡東員町中上
 
敷地神社    京都府京都市北区衣笠天神森町
大宇迦神社         京丹後市弥栄町溝谷フキノオカ
 
大津神社    大阪府羽曳野市高鷲8
神須牟地神社     大阪市住吉区長居西
弓削神社          八尾市東弓削
         
大麻山神社   島根県浜田市三隅町室谷 (旧地名那賀郡)
穀木神社       松江市乃白町    
 
楮祖神社    山口県玖珂郡本郷村
 
鷲尾神社      香川県まんのう町十郷
麻部神社         三豊市高瀬町上麻
 
 
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御所神社 (忌部大神宮)
 
 
大麻比古神社      徳島県鳴門市大麻
御所神社        美馬郡つるぎ町貞光吉良
友内神社               友内山
高地三所神社         半田日開野
鷲羽神社        三好郡東みよし町東山
山崎忌部神社      吉野川市山川町忌部山 
種穂忌部神社             川田忌部山
高越神社                 木綿麻山
川島神社                  川島町粟島
牛島八幡神社             鴨島町牛島
森藤八幡神社                   森藤
広旗八幡神社                      三郷字種野 
 
 

調べれば、他にもまだまだ在るでしょうが、今回はここまでにします。
特に関東地方の方で、興味をお持ちの方には、是非、ワシ・トリ系神社の総合的な研究をしていただきたいものと願います。