空と風

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阿波国風土記 編輯御用掛 という大発見!!

 
このブログにもコメントをくださる、ぐーたらさん が大発見をしました。
 
状況を簡単に説明すると、ぐーたらさんが郷土の資料を調査中、『ふるさと阿波』という書籍のなかに「阿波郷土会報」なる文書を見つけました。
それに「阿波国書誌解説」という一文があり、その内容というのが風土記編纂掛(へんさんかかり)名面」。
 
なんと、明治初年の頃、藩庁(徳島藩)にて『阿波国風土記』が編纂されていた時のメンバーの一覧なのです。
 
以下に、ぐーたらさんのブログより転載 して説明します。

 
 
風土記編輯御用掛  長久館出仕                松浦 宗作
末九月松浦氏へ同勤       士族五人御扶持
                    常三島             渡辺 圓
                    同                 八木 正典
                    御弓町             郡 一郎平
                    佐古 椎宮下神職    生島 瑞穂
南分右同惣而士族御用取扱  板野郡坂東村神職   永井 五十槻
郷学所ヘ出ルニ付除ク      阿波郡尾開村士族    四宮 哲夫
                    同郡香美村神職     浦上 美澤
                    美馬郡上野村神職   二宮 香取
                    三好郡盡間村神職   近藤 忠直
                    麻植郡山崎村郡付卒 久富 永治郎
                    名西郡諏訪村神職   多田 義高
 明治四年末七月二十三日   名東郡早渕村郡付卒 後藤 麻之丈
                    勝浦郡小松島浦     八木 佳七
                    那賀郡吉井村       服部 友三郎
                    同郡大京原村       高石 延吉
                    海部郡郡奥浦       桂  弥平
                    同郡牟岐神職     榊  枝直
 従事セヌウチニ転        同郡同浦神職       阿部 三豊
 ジタラシキニ付除ク
                    徳島  小杉 榲郎
                    名東  新居 正氏ヲ脱セルカ

なんと、小杉榲邨(ここでは、小杉榲郎)の名が見えます。
全県に渡って、神職を中心にメンバーを集めています。
「従事セヌウチニ転ジタラシキニ付除ク」が、小杉榲邨にかかっているのか?が、ちょっと不明です。
 
 
※ 「阿波国書誌解説」という文書による上記名面の説明。
 
松浦 宗作
仲之町(八百屋町)の人。字は長年、野口年長の門人 国学家、明治十年十月歿。年六八
著書 「土御門院御陵考註」「神輿幽考」「阿波国風土記
 
渡辺 円
徳島市助任村六百三十五番屋敷、士族渡辺六郎長男、文政二年三月二十五日生 神職
明治三十四年二月二十五日歿
 
生島 瑞穂
庄附近の人 矢三 八坂神社、三島神社神職 著書「忌部神社者略」瑞穂は繁高と同一人か。
 
永井 五十槻
名は精浦、精古の孫、天保七年一月十七日生、大麻比古神社神主忌部神社主典、
愛宕神社社掌、大正二年四月八日歿、年八七(大森絹栄氏報)
 
四宮 哲夫
初名 哲之助 文政十年二月十九日生、名は利貞 金谷と号す 儒者
晩年失明す、明治二十三年二月七日歿、年六四
 
浦上 美澤
名は和延 天保九年九月二十三日生、近藤忠直と共に「阿波郡風土記」を遍す。
明治二十三年二月七日歿 年六四
 
近藤忠直
文政五年十二月二十日生、国学家 明治十二年高知県出 史誌編纂掛り
宝国小志(郡村誌)三好郡之部。井成谷、井川、池田、馬路、白地 各村誌を著す。
明治三十一年五月二十日歿。
 
久富永字治朗
山崎にこの姓の人なし、知る人なし(吉尾十代一氏報)年七七
 
多田 直清
兵部近江上浦の人「村邑見聞言上記」(名西、麻植)を著す。
明治九年十二月六日歿、義高は直清と同一人物か。
 
後藤 麻之丈
尚豊、明治五年二月まで編纂、名東 勝浦据任
大正三年十月九日歿、年七六
 
八木 佳七
名は直元、俳人、五日庵其家 日野八坂神社神職
明治十三年一月歿、年七〇
 
服部 友三郎
庄屋で寺子屋の師匠、明治四年里長 明治十三年一月歿
年七〇(佐々忠兵衛氏報)
 
高石 延吉
絶家 墓所不明(中西長水報)
桂  弥七(弥平?)
文化十一年三月十日、木岐浦若山家の三男に生まれ奥浦村桂家に入った。
明治の初 高知県安芸郡に出稼中死亡した。月日年令不明(元木喜好氏報)

後藤 麻之丈氏については、国府町早渕の人で、後藤家文書にも出てきます。
庄屋を勤め、後藤家文書内では「麻之丞」(出てこない「丞」の水の部分が口の漢字)となっています。
後藤捷一氏がその子孫です。
 
名西郡諏訪村神職 多田義高氏についてはきちんと調べてはいませんが、現在の石井町浦庄近辺の神社、日吉神社王子神社、斎神社の神主が多田姓の方なので、前記の神社の神職であった方だろうと思われます。
 
同様に「浦上美澤氏」も現在の市場町天満神社若宮神社八幡神社住吉神社、八坂神社、建布都神社等の神職が浦上姓の方です。
 
震えが来ませんか。
大麻比古神社神主の方までいます。先に自分で書いといて何なんですけど、ほんとに藩を上げての一大プロジェクトだった訳ですね。
                                        

明治初年の頃、「風土記編輯御用掛」によって明治版「阿波国風土記が編纂(再編纂?)されていたのです。
 
岩利大閑によれば、明治5年まで「阿波国風土記」が現存していたが、小杉榲邨が「阿波古風土記考証」を出版した時点で、日本国内ら姿を消してしまったといいます。
 
その小杉榲邨が中心となったメンバーによる、正に明治初年の「阿波国風土記」が存在したわけで、「阿波古風土記考証」とは別かもわかりませんが、時代が完全一致することから、必ずその影響は受けているはずです。
 
正に、とんでもない未発見の情報が見つかったのです。
 
そこで、ぐーたらさん、その「風土記編纂掛名面」を調べました。
そして、 『在村国学者儒学者の阿波古代史研究についての史学的研究 : 明治初期の『阿波国風土記』編纂にかかわって』という資料を見つけます。
 
著者は、丸山幸彦 奈良大学・文学部教授で、その中に、

明治二年徳島藩のもとに、小杉榲邨(すぎおみ)などが中心となって「阿波国風土記編輯御用掛」が設置され、阿波の歴史と地誌の大規模な編纂が企てられたが、同五年の廃藩とともに廃止された。
この編輯掛には多田をふくむ多くの国学者儒学者が出仕していた。
 
の一文がありました。
 
阿波国風土記編輯御用掛」とは、在郷の有志が集まった私設の組織ではなく、徳島藩が主導し、しかもあの小杉榲邨率いる一大官製プロジェクトだったのです。
 
 
そして、この本を元にさらに調べを進めたところ何と!
筑波大学附属図書館に、タイトル阿波国風土記』全五冊、を発見しました!!

そのうちの何冊かには風土記編纂掛」の印が押されているそうです。
 
すなわち、上記の徳島藩プロジェクト「阿波国風土記編輯御用掛」が手がけた『阿波国風土記』ということです。 現存したのです。
 
ただし、これが阿波國各地に伝わる伝記伝承、あるいは古風土記を参照に編纂した明治の新風土記なのか、風土記編纂掛が参考にしようとしていたまさに古風土記そのものなのか?
タイトルを見ただけでは分かりません。
そこで、筑波大学附属図書館の検索機能を使って、該当ページを見てみます。
 
 
阿波國風土記
アワ ノ クニ フドキ
久富憲明撰
[製作地不明]   [製作者不明]

形態     5冊 ; 24.0×16.6cm 
別書名    阿波國風土記編輯雜纂 (へんしゅうざっさん)
 
注記     稀覯本につき記述対象資料毎に書誌作成
写本
      不分巻5冊 (1帙入)
      冊次は小口書より
      巻頭の書名下に「巻之1」とあり
      [5]の16丁ウラに 「右置文麻植郡川田村神主早雲兵部所藏
                 「天保十年三月木内茂臣が写せし本をもて校合」
                 「天保十年四年四月八日野口とし長」 等の朱墨による書き入れあり
 挿絵あり
 墨書と朱墨の書き入れあり
 見せ消ち, 胡粉, 紙片の貼付による修正あり
 付箋あり, [5]に紙片(25.0×16.6cm)の挟み込みあり
 印記: 「光輔」, 「風土記編集掛
 保存状態: 虫損あり, [5]の後表紙なし
 
 
別書名が、 阿波國風土記編輯雜纂、とあるということは、やはり古風土記の写本ではなく、何らかの資料を元に編纂した新風土記、またその資料ということになります。
 
ところが、です。
天保十年三月木内茂臣が写せし本をもて校合」
などという書き入れがあるそうです。
天保十年とは、1839年です。 ちなみに、あの篤姫3歳の年になります。
 
阿波国風土記編輯御用掛」が設置されたのは、1869年。
天保十年に写せし本」
とは何なんでしょうか?
写した原本は?
しかも所蔵していた「神主早雲兵部」とは忌部神社の神主です。ただ事ではありません。
 

緊迫の経緯の詳細は、ぐーたらさんのブログを見るべし!! (2月以降の記事参照)
 
 ぐーたら気延日記(重箱の隅)
 
 筑波大学 付属図書館
 
上記URLの検索窓に、「阿波国風土記」と入れて、サーチをかけるべし。

(続く)