空と風

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癒す猫

NHKの「お江戸でござる」などにも出演され、江戸の風俗や文化について興味深いお話をされていた杉浦日向子先生は、私の好きな文化人の一人だった。

あのおっとりした喋り方もとても魅力的で、しかし見かけによらず酒豪?で、朝から蕎麦屋でお酒を召し上がるのが好きだったとか・・
私もそんな粋な生活がしたいと思ったものだ。


かなり以前、仕事で先生をお迎えにあがったことがある。
そこへたまたま一匹の猫が通りかかり、止めてあった車の下に入って行った。
私が車の下を覗き込んで「おい。そこにいたら危ないぞ。」と話しかけたのを見て、先生が

「ねこ、お好きなんですか?」

と訊ねられた。

「はい。」と、私が答えると

一言 「癒されますよねぇ。」

と、おっしゃった。

その後「癒す」とか「癒し」とかの言葉が流行ったり、「ペットが飼い主を癒す」とかいう言葉が普通に使われるようになったけれど、そのときはじめて、私は「人が猫に癒される」という表現を聞いた。

その時、心底「あぁ。そうだな~」と思ったものだ。
それまで、犬や猫が大好きで「かわいい」と思う感情は人一倍と思っていたが、自分が彼らに癒されるという認識は持ったことがなかった。
いや、気付いていなかった。

犬も猫も好きだが「癒し」の力は猫のほうがより強く持っている。
飼ってみればわかる。
犬は疲れる時がある。
猫は、ただそこで寝そべっているだけで、・・ああそうだ。
たしか先生も続けてこう言われた。

「そこに寝そべっているだけで、その姿に癒されますよねぇ。」


ねこを“ただの”ペットとしか見えない人は寂しいねえ。