空と風

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鳥の一族 15 邇邇芸命

 
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最初に高天原から天降った天神之子、須佐之男命は中国(ナカの国)の開拓を始めました。
しかし、記紀に見るように、それほど積極的ではなかったようです。
早々に隠居を考えた様子が「妣の国に行きたいと乞い願った」というエピソードになったのでしょう。

 

そして、この国の統治を子の中から優秀な者に委ねようと考え、当初は五十猛命大屋毘古神・射楯神・天村雲命)を適任と考えていたようです。
 
その後、もう一人の優秀な弟が力をつけてきました。大穴牟遅神です。
結果は御存知の通り、大穴牟遅神大国主となります。
この「大国主」は、初代ともとれ、須佐之男命を継ぐ二代目ともとれます。
 
大国主命は、息子の事代主命建御名方命と力を合わせ、ナカの国を創りあげていきますが、ここで本家高天原がナカの国への(いうなれば)遷都を決めるわけです。
 
後は有名な国譲りへと物語が展開するわけですが、私は、鳥の一族2で、「“国譲り”という物語そのものが歴史の大きなカムフラージュだった」と書きました。
それ以前にもどこかで「国譲りはなかった」と書いたように思います。
これから、その種明かしを始めます。
 
 

結論から書くと、邇邇芸命から鵜葺草葺不合命までは、架空の人物なのです。
 
 えーーー!!??
 
 
と、思われるでしょう。

むしろ架空というなら、大国主命一族の方なのではないか?とも。
高天原は、出雲(島根)に国譲りを迫り、承諾されると天孫は南九州に天降り、やがて神武天皇は瀬戸内を東征、大和で建国。
出雲には立ち寄りもしません。
 
建国にノータッチの出雲国大国主命一族の物語を、記紀は大変な字数を割いて書き記しています。
それで昔から、地方の王族が大和政権に組み込まれていく過程で云々かんぬんと言うのですが、それにしても不自然が過ぎるでしょう。
その理由は、これから書く私の仮説で説明がつきます。

上で、「邇邇芸命から鵜葺草葺不合命までは架空の人物」と書きましたが、正確に言えば全くの架空ではありません。
どういうことかといえば、一人の人物に2つの名を与え、別人格として物語を作ったのです。
 

具体的に見ていきましょう。
前回、初めて高天原から天降った王位継承権を持つ男性は須佐之男命だと書きました。

 
 
邇邇芸命とは、須佐之男命の投影なのです。
 
 
須佐之男命は、天降ったあと、大山津見神の孫娘・櫛稲田姫と結婚します。
また別の伝承では、大山津見神の娘・神大市姫と結婚し、大年神と宇迦之御魂神を生みます。
この大年神大国主命であるという説があることも以前書きました。
 
一方、邇邇芸命も天降ったあと、大山津見神の娘・神阿多都姫(木花之佐久夜姫)と結婚します。
そして二人の間に、火照命火須勢理命火遠理命、が生まれます。
 
 
火遠理命(山幸彦・ソラつ彦)は、兄、火須勢理命(海幸彦)に虐められ、塩椎神のアドバイスで、海神の王・豊玉彦の元へ行き、
その娘、豊玉姫を妻とし、潮盈珠(しおみちのたま)・潮乾珠(しおひのたま)を授けられ、それを持ち兄を降伏させ、王位継承者となります。
 
この火遠理命に対応するのは、もちろん、大国主命です。
 
大国主命は、兄たちに虐められ、または殺されかけ、大屋毘古神のアドバイスで、須佐之男命の元へ行き、
その娘、須勢理毘売を妻とし、生大刀・生弓矢を授けられ、それを持ち兄を降伏させ、王位継承者となります。
 
登場人物こそ違え、物語の本質が全く同じことがわかると思います。
 
 
高天原から天降った天神之子は、大山津見神の娘を娶り、その子は兄弟で争い、弟が実力者(父)の娘(つまりは異母妹)を妻とし、
2つの武器(兵力)を与えられ、その権威の後ろ盾と武力で兄を従え、王位を継承する。
というストーリーです。
 
 
ここでこの説が正しければ、綿津見の王・豊玉彦とは、須佐之男命の投影ということになります。
須佐之男命は、もとより伊邪那岐命から「海原を治らせ」と神勅を受けています。
豊玉彦の宮は、「海の宮」又は「龍の宮」というのです。
須佐之男命の宮は、「瀧の宮」です。
 

では、その次の代はどうでしょうか?
火遠理命天津日高日子穂穂手見命)は、豊玉姫との間に、天津日高日子波限建鵜草葺不合命を儲けます。
鵜草葺不合命は誰と対応しているのでしょうか?
 
 
迦毛大御神(かものおおみかみ)、阿遅志貴高日子根神です。
 
 
 
(続く)