いぬ
帰る 去る
この方言は、四国だけでなく、九州~近畿で使われる。
が、やはり、使う人は減少の傾向にある。
前回、「座る」の解説で、古来、「すわる」という状態は「いる」と表現されたと紹介した。
「居ても立ってもいられない」というように、立つの対義語である座るは、本来「居る」であった。
つまり、 「いぬ」とは「居ぬ」 (そこから居なくなる) という意味である。
「帰る」と言わずに「いぬ」と言うのは、どれだけ古代日本の「標準語」に近かった人たちの言葉であるか、よくわかる。
阿波や九州の一部ではさらに、 いぬる と言うところがあった。
時代劇かよ! という感じがするであろう。
阿波での使用例を書いてみる。
もういぬんかえ? もう帰るの?
いまいにがけじゃ 今帰るところだ
いまいぬるところじゃ 同上
いまいにしなじゃ 今帰る途中だ
いねばいね 帰るのなら帰れ
※ 一部『阿波言葉の辞典』から引用