空と風

旧(Yahoo!ブログ)移設版

謎の方言 アババイ

 
数週間前になるが、テレビの「秘密の県民ショー」を見ていたら、こんなシーンがあった。

 
 三重県民は、まぶしい ことを、あばばい と言います!
 
 ええ~!!

 
一部の徳島県人は、 へえ~ と思ったことだろう。
なぜならば、この「あばばい」は、阿波弁でもあるからだ。
 
 
イメージ 1
 
三重のご当地ヒーロー アババイン
 
私の住む、県中西部から西部では、使わない。
私は、県西部全域から生徒の集まる池田高校の出身だが、一度足りとも聞いたことがなかったので、間違いないだろう。
 
阿波弁研究で有名?な、徳島大学の仙波教授によれば、「あばばい」が使われるのは、県北東部と県南部に多く、一部、「木沢」「東祖谷」という四国山地山間部でも使われるらしい。
 
あばばい」の変化形としては、「ばばい」 「まばい」 「あまばい」 があるという。
そういえば、「まばい」なら年寄りの一部が使っていたような気がしないでもない。
 
教授の説としては、
 
 まばゆい → まばいい → ばばいい → ばばい
 
と変化したのではないか? 
また、高知の幼児語に「ばばい」があることから、子供に向けた言葉ではないか? という。

しかしこの説は、どう見ても苦しい。
幼児語というなら、なぜこれだけ広く一般的に普通の会話で使われるのか?
それに、こちらの幼児語で「ばばい」は「汚い」である。
 
 
(あば)は、阿波(あわ・あは)の発音の一つである。
鳴門にも、阿波を(あば)と呼ぶことがあったという証言がある。
中国地方から関東にまで、地名で「阿波」と書いて、(あば)(あんば)と読む所が複数ある。
阿波国の名の語源が「粟」にある、と一般的に言われているが、それは間違いで、本来の意味は、
 
 「あば」 = 「まぶしいほどの太陽」
 
なのである。

あばばい」は、たんに「まぶしい」という意味ではなく、強烈な太陽の光に限定して使う、という地域が多いのである。
 
延喜式式内大社、正一位、阿波國名方郡 天石門別八倉比賣神社 のご祭神が、なぜ、大日霊命(天照大神なのか、よくわかるであろう。
 
延久二年(1070年)六月の太政官符で、「八倉比賣神の祈年月次祭は、日本国家の大典である」と書かれているのもうなずけるだろう。
 
九州肥筑方言では、断定や詠嘆のニュアンスで語尾に「~ばい」が使われるが、これは「あばばい」から転用されたものである。
「あば」の意味さえわかれば、その理由もわかるというものである。
 
                                                                    まじめによまないでね
 
 
九州といえば、「~けん」も使うが、これも阿波と同じである。
九州各地の漁港は、明治期に阿波の漁民が開港しているが、それ以前、はるか昔から阿波の移民があったのである。
 
博多にも「那珂」の地名が残っているが、全国各地の「那珂」「那賀」(なか)(なが)は、古代阿波の長の国(那賀郡)からの移民があった地なのだ。
故にそれら各地には、阿波に関係する地名・伝承・神社・御祭神が、一部今尚残っているのである。

 
 
下に、博多弁・北九州弁の一部を Wikipedia から抜粋してみよう。
 
 「何なん?」「なんしよーん?」という語尾に「ん」がつく北九州弁。
 
 「せ」→「しぇ」、「ぜ」→「じぇ」と発音される。「先生はJRで来る」→「しぇんしぇいはぜいあーるでくる」
 
 「寝なければならない」→「寝らないかん」
 
※ 阿波弁で、「立て」を「立てれ」、「立たなければならない」を「立てらないかん」と言うがごときである。
 
 「来させる」→「来らせる」
 
 かう→こうて
 いう→いうて
 わらう→わろうて
 
 「いける」{カ行下二段} …未だ食うことが出来る。
 
 「おろたえる」{ア行下一段活用} …うろたえる。
 
 「かく」{カ行五段活用} …山笠を担ぐ。
 
 「こえる」{ア行下一段} …太る。
 
 「なおす」{サ行五段} …片付ける。仕舞う。
 
 「ねぶる」{ラ行五段} …舐める。
 
 「こまい」{形・ク} …小さい。細い。
 
 「ちっこい」…小さい。
 
 「ずく」否定の助動詞について、結果を表す。
 「としちゃんは今日は来んずくやったね。」 [共通語訳]「としちゃんは今日はとうとう来なかったね。」
 
 「なし」「なして」{副} …なぜ、どうして。
 
 「やわい」{形・ク} …柔らかい。「やおうする。」
 
 「〜けん」(順接) 「〜から」
 
 「〜げな」(伝聞、伝言、伝達) 「明日は雨の降るげなけん、傘ば持って行っとかなよ。」
 
 「〜ぞ」 「俺が作ったとぞ!」
 
 「〜っつぇ」「俺が作ったっつぇ!」 ※ 阿波弁の「~っちゃ」に該当する。

ある話し言葉が伝わっても、当然現地言葉と混合するから、全く同じということはないのである。
当然何百年も経てば変化もする。
それでなお、この類似はどうだ。
 
 
8~9年前、私は、阿波弁を完全に喪失していたので、Yahoo!掲示板の「衝撃!徳島の言葉」というトピに参加していた。
そこで思い出した阿波弁を書きながら気づいたことは、阿波弁の多くが、方言というよりも「古語」であるということだった。
まるで古文にでも出てきそうな言葉の使いまわし。今でも徳島では方言として普通に使っているが、他地方では使われない言葉の数々。
結論から言おう。

阿波弁は、古代の「公用語」である。

「標準語」ではない。念のため。
 
 
~ところでNHKの朝の連続ドラマは徳島県が舞台になっています。
 出演者には阿波弁がうまい人とそうでない人がいます。
 阿波弁の特徴は間延びした、やわらかい調子にあると思っています。
 おそらく昔の日本語が色濃く残っているのでしょう。
 これは高校の国語の先生が言っていました。「阿波弁は古典語が残っている」と。~
 
 
 
 
司馬遼太郎は、「街道をゆく 阿波紀行・紀ノ川流域」で、「京都弁の祖は 阿波弁ではないか」との説を書いている。
その理由がわからないので、氏は、戦国時代の 三好長慶 の影響を考えていたようだ。
しかし、実際はそんなに浅い歴史ではないのである。
 
多数の中に入って、少数の話し言葉が多大な影響を与えるという要素は何か? と考えてみたまえ。
 
 
 
仙波教授によれば、この「あばばい」は、
 
 三重県の志摩、和歌山・高知など、黒潮に洗われる地方で使われる。
 
という。
このブログを見ているような人は、なるほど! と思うであろう。       忌部である。
 
和歌山、三重など、話し方が、驚くほど徳島とそっくりである。

 
三重県人の誇りは、天照大神をお祀りする伊勢の皇大神宮(内宮)豊受大神をお祀りする豊受大神宮(外宮)の存在である。
 
神武天皇の時代、つまりまだ三重の伊勢に、この神々が祀られていなかった時代に、伊勢の国造の祖となったのは、阿波忌部の祖 天日鷲命である。
 
私が 阿波弁が古代の公用語 という意味が理解できるはずである。
 
まじめによまないでね 
 
 
 
光の戦士 KIHOKU戦隊 アババイン
 
曲がマジかっこいいんですけど。
 
徳島、負けとんちゃうん?
 
 チャットモンチー 呼んでこいや!
 
それにしても、このアオレンジャーみたいな兄さんが、緊張して 手と足が一緒に出ているのがわかるだろうか?
 
これは、古代日本人の身体操法で ナンバ という。
 
武道の体の使い方も、飛脚の走り方もこれである。
 
唯一、激しい動きの中で、この古来のナンバをそのまま使って踊るのが、阿波踊り である。
 
同じ方の手と足が一緒に出る動きなのである。
 
アババイン、恐るべし・・・。
 
 
 
イメージ 2
 
阿波と伊勢は兄弟国よ
 
写真は、☆ はまぼうの里 ☆ さまに提供していただきました。
 
掲載に関し、はまぼう様には、なんと アババインご本人様からも 了解を得ていただきました。
 
心から、感謝いたします。