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式内社(和多都美豊玉比賣神社)比定① 雨降神社 徳島市不動西町

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日本一社 延喜式式内社 阿波國名方郡 和多都美豊玉比賣神社(論社) 雨降(あまたらし)神社

鎮座地 徳島県徳島市不動西町3-2024

御祭神  豊玉姫命

創立年代不詳


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式内社「和多都美豊玉比賣神社」論社の一社。
文献によっては、式内社「天石門別豊玉比賣神社」にも比定される。

「雨降」(あまたらし)の字は、御祭神や古文献との絡みで考えれば、本来「天帯」または「天降」であったはずである。

元慶七年(八八三)従五位上の神階が授けられている。

御祭神を豊玉姫命とする豊玉姫神社(とよたまひめじんじゃ)は、各地に鎮座しているが、同名の延喜式式内社阿波国のみにある。
 
地図を頼りに南から当社に向かったが、目的地よりだいぶ南の畑の中にぽつんと鳥居だけが建っており、見ると「雨降神社」と書かれてあった。
「昔はこの辺まで社地だったのか」などと考えながら車を走らせたが、後で調べるとそこだけでなく当社を中心に約1キロ四方に鳥居が建っているらしい。
現在の社殿はご覧のとおり傷みが激しいが、古来相当の崇敬を集めていたことがうかがえる。


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御祭神の豊玉姫命は、『古事記』では豊玉毘売命、『日本書紀』『先代旧事本紀』では豊玉姫命と表記される。
古事記』上巻、有名な「海幸彦 山幸彦」神話に登場する女神。
綿津見(ワタツミ)神の娘、玉依姫命の姉で、山幸彦(日子穂穂出見命)の妻となり、鵜葺草葺不合神を御産みになる。


物語の主人公である日子穂穂出見命は、幼名を火遠理命(別名を山幸彦)といい、天孫邇邇芸命木花咲耶姫命の第3子に当たる。
兄である海幸彦の釣り針を無くしてしまった山幸彦は、赦されず家を追われ、海神の宮へ赴き、その娘、豊玉姫と結婚して霊力を授かり、兄に報復するという物語である。

出産の際、豊玉姫は八尋和邇(やひろわに)の姿、文献によっては龍の姿となったところを「見てはならぬ」と伝えてあった山幸彦に見られたため、海神の国へ帰った。
鵜茅不合葺命は、その後、豊玉姫の妹 玉依姫に養育され、後にその玉依姫神との間に神倭伊波禮毘古命(神武天皇)をもうける。

つまり、豊玉姫命は初代天皇の祖母に当たる。



ここから分かることは、山上国家である高天原から天下った天孫の子が、海岸部を支配していた海神(海人)族の王の娘と結婚し強大な力を得た。
それで日子穂穂出見命は、兄弟の中から皇統を継ぐ立場になったと考えられる。

式内豊玉比賣神社が阿波だけにあることから分かるように、もちろん阿波の神である。
豊玉比賣の名を冠する式内社は他国にはないにもかかわらず、阿波には
「和多都美豊玉比賣神社」
「天石門別豊玉比賣神社」
と、二社もあるのである。

古事記にも、皇祖に係わる大女王として豊玉比賣の物語がはっきり記述されており、その豊玉比賣を祀る式内社が全国で阿波にしかないにもかかわらず、古代史、建国史を語る上で阿波を一切無視するという思考回路が理解できないというようなことを岩利大閑氏が書いておられたが、全くその通りである。


阿波との関わりや周辺情報は「不思議の徳島」に書く予定。


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※ 参拝しながらブログに書いていない神社情報がたまってきたので、少しずつ書いていきます。
  書き始めるといろいろ書きたくてキリがないので、そのへんは「不思議の徳島」で。